中国近世語学会2025年度研究集会のご案内

ご挨拶

夏のような猛暑がいつまでも続くことにうんざりしていたところ、ようやく秋めいてきたと思いきや、突然冬がやってきたような日もあり落ち着かないことですが、会員諸氏におかれましては健やかにお過ごしのことと存じます。

本年度の研究集会を下記の要領にて開催いたしますので、年末の慌ただしい時期ではありますが奮ってご参加下さい。今回は、若手の方々による興味深い発表タイトルが並んだことに加え、語彙・訓詁研究の大家である浙江大学の方一新先生をお迎えしてご講演いただくことになりました。方先生のメインの領域は中古漢語ですが、近世語にも豊富な知見をお持ちですので、貴重な交流の機会となることでしょう。皆様のお越しをお待ちしております。

中国近世語学会会長 竹越 孝
2025年11月11日

研究集会について

日時:12月13日(土)

場所:関西大学千里山キャンパス児島惟謙館第2会議室

プログラム

(発表30分 質疑10分)

◎午前の部 

・10:30−11:10 発表1  鄒 王番(関西大学非常勤講師)

              「宣教師家族における中国語経験の蓄積と継承」

 本発表は、19世紀末から20世紀初頭にかけて活動した宣教師およびその家族を対象に、中国語学習の経験がどのように蓄積され、世代を超えて継承されたのかを考察するものである。これまで筆者は、Frederick William Baller の Letters from an Old Missionary to His Nephew に見られる言語教育観、David Willard Lyon の中国語習得と教育実践、そして Absalom SydenstrickerとPearl Sydenstricker Buckの父娘における言語と文化の継承について個別に研究してきた。今回の発表では、それら三つの事例を総合的に捉え、宣教師家族という継続的な生活・信仰共同体のなかで形成された「言語経験の蓄積」という視点から再検討を試みる。さらに、この蓄積が個人から家族、家族から社会へと拡張し、教育・出版・文学など多様な形で文化的継承として機能した過程を明らかにしていく。

・11:10−11:50 発表2  余仁偉(関西大学博士後期課程)

              「《列朝诗集》所记李东阳诗作中的叶韵考察」

 钱谦益所编《列朝诗集》丙集第一卷收录了李东阳《拟古乐府》的全101首古乐府诗,其中有17处韵脚注“叶”。叶韵的标注对于韵母系统的分析有很大价值,可以通过注“叶”韵字与其他韵字的通韵来判断用韵所用音系中韵母的通转情况。《列朝诗集》对韵脚字的叶韵标注全引自何孟春在《拟古乐府》中的标注,但何孟春在《拟古乐府》中共在41处韵脚字后注“叶”,而《列朝诗集》只引用了17处。本研究主要围绕两点进行讨论,一是判断这些叶韵所反映出的韵母特征,二是推测为何钱谦益在《列朝诗集》中并未全部引用何孟春所标注的叶韵。

・11:50〜13:00 昼休憩

◎午後の部

・13:00−13:40 発表3 安保 侑作(神戸市外国語大学博士後期課程)

              「崔世珍の見た“咱”字音」

 本発表では崔世珍(1473-1542)により編纂された各種音韻資料を参考に、崔世珍の記録した“咱”の字音について検討する。
 一般に“咱”は“自家”の合音によって成立した語とされ、現代方言を含め基本的に平声字として扱われている。これ対し崔世珍の著した『翻譯老乞大』中のハングル音注では入声の標示が付されている。『老乞大』『朴通事』所収語彙の注釈書である『老朴集覧』中の『單字解』を見ると、“咱”に対して『五音集韻』からの引用として“子葛切”の注音が与えられている。本発表では 『五音集韻』の他に“子葛切”と同一の反切が記載される『四声篇海』、崔世珍による『四声通解』などの資料に反映される音注をもとに、崔世珍が“咱”の字音をどのように認識していたか、他の入声字の音注状況も取り上げながら論じる。

・13:40〜14:20 発表4  張蔚(関西大学大学院博士後期課程)

              「中島錦一郎とその周辺」

 日中両言語において度々問題視されてきた日中同形語に関する比較や研究は1970年代に始まったとされるが、それ以前の半世紀以上の近代中国語・日本語教育において、日中同形語はまったく注目されなかったのだろうか。「中島錦一郎編『日清言語異同辨』について」(張蔚,2025)では、極早期の日中同形語辞典の存在を指摘し、中島の「同形語」に対する認識を考察した。
 中島錦一郎は政治界とも商業界とも関わった人物で、1905年から『日華作文軌範』や『日清言語異同辨』(1906)、『日華時文辭林』(1906)、『日清商業作文及會話』(1907)などの教科書や辞典を次々と出版した。また、中国語習得において、常に中国語と日本語を対照的に考えた人だと言えるが、こうした考えは、中島の個人的なものだったのだろうか。
 本発表では、中島の人物像を更に掘り下げるとともに、中島と『日華時文辞林』を共編し日清語学会の主幹であった杉房之助、東洋協会専門学校の中国語教師を長く務めた足立忠八郎、東洋協会専門学校の中国語教師であり日本語教師でもあった金井保三、杉房之助と『日清語学金針』を共編した馬紹蘭らに注目し、それぞれの経歴や繋がりを明らかにし、彼らが実践した中国語教育について考察したい。

・14:20-15:00 発表5 萩原 亮(中央大学/日本学術振興会)

「イサーイヤ著『露中辞典』におけるグレイヴ・アクセントの特徴」

ロシア正教会北京伝道団の宣教師イサーイヤが著した『露中辞典』(1867)は清代北京語のストレス・アクセントを記録した資料として知られる。その状況はアキュート・アクセントとグレイヴ・アクセントの2種の記号によって示されるが、それぞれの機能が同一であるか、あるいは何らかの差異が存在するかといった問題については明らかでない点も多い。そこで本発表は、15世紀以降の東スラヴ語圏における文献資料に見られるアクセント記号の使用状況を参照することで、『露中辞典』における2種の記号のうち、特にグレイヴ・アクセントの特徴について分析し、著者イサーイヤが東スラヴの文献における規則を応用して書き分けを行っていた可能性を指摘する。

・15:00−15:15 休憩

・15:15―16:15

 講演 方 一 新(浙江大学)

「明清方俗語詞小札——以漢語教科書為例」

《朝鮮時代漢語教科書叢刊》所收《老乞大》《朴通事》《訓世平話》等漢語教科書,口語性強,其中多有元明清時期的方俗語詞,如“標致”,(1)“咳,真個好標致,便猜着了”(《朴通事諺解》卷上,221頁);(2)“他標致,是我好相識”(卷下,304頁),義為出色,傑出;“混堂”,(1)“孫舍,混堂裏洗澡去來”(卷上,241頁)指澡堂,今杭州話仍有留存,乃至有以“混堂”作為地名者,如“混堂新村”。擬對類似方俗語詞酌作考釋,聊補相關詞典之闕失,並就正於大方。

・16:15事務連絡・情報交換など

年会費納⼊のお願い

 今年度(2025年度)会費(⼀般5,000円、院⽣・学部⽣3,000円)を、郵便振替または銀行振込にてお納めください。昨年度分までの未納のある⽅は、年度を明記のうえ、あわせてお納めください。

・郵便振替の場合

              口座番号:00980–6–119965 口座名称:中国近世語学会

*振替払込書(青色)は郵便局に備え付けられているものを使用してください。

・ゆうちょ銀行にお振込の場合

              099(ゼロキュウキュウ)支店

              当座預金 0119965 チュウゴクキンセイゴガッカイ