中国近世語学会2025年度研究総会のご案内
ご挨拶
2025年4月より2年間、本学会の会長を務めます竹越です。東京都立大学の大学院生であった私が最初にこの学会に出席したのは1993年5月のことで、場所は練馬の大東文化会館でした。初めて本物の入矢義高先生を見て憧れを募らせたことや、佐藤晴彦先生が流暢な中国語で質疑をされたのに驚いたことなどが思い起こされます。その後就職したのを機に、会費を払える目処が立ったということで、当時学会事務を担当しておられた大塚秀明先生に入会希望のハガキを書いたのでした。
以来、私にとってこの学会は数多くの機会を提供してくれたホームグラウンドです。本学会は、1960年代初頭に始まる清末文学言語研究会と明清文学言語研究会の活動を源流とし、1985年に中国近世語研究会として発足、1995年に現在の学会組織となりました。このような長い伝統の一方で、年2回ある研究会には誰でも気軽に応募でき、ちょっとした思い付きでも小特集として提案できるという柔軟さも併せ持っています。次世代への継承にむけて、持続可能な体制を整備できるよう微力を尽くしたいと思いますので、ご助言やご提案のほどよろしくお願いいたします。
中国近世語学会会長 竹越 孝
2025年5月1日
研究総会について
日時:2025年6月14日(土) 11:00開始
場所:中央大学後楽園キャンパス 6号館4階6429教室
〒112-8551 東京都文京区春日1-13-27
https://www.chuo-u.ac.jp/access/kourakuen/
・東京メトロ丸ノ内線・南北線:後楽園駅より徒歩5分
・都営三田線・大江戸線:春日駅より徒歩6分
・JR中央線・総武線:水道橋駅から徒歩12分
プログラム
・11:00-10:05 開会挨拶
◎午前の部
・11:05−12:05
発表1 張宇輝(関西大学大学院博士後期課程)
「近世白話資料に見る副詞としての「左右」とその共起環境」
本発表では、明代から民国期にかけての近世白話資料(小説・新聞など)を対象に、「左右」が方位詞や数量詞とは異なり、話者の主観的な判断・予測を表す副詞的用法に注目する。たとえば、「你左右不过五十岁的人…」や「我那里左右要请朋友…」といった表現に見られるように、「左右」が文全体を修飾する副詞的機能を担う事例を通時的に分析し、構文上の変化や意味上の変化を手がかりに、副詞化の過程を考察する。さらに、語用・構文的環境の分析を通じて、感覚動詞との共起関係に着目し、副詞化の背景に対する新たな視点を提示することを試みる。
・12:05〜13:00 昼休憩
◎午後の部
・13:00−14:00
発表2 千葉謙悟(中央大学)
「『京話指南』の入声字について」
本発表ではフランス人外交官アンボー=ユアールが著した北京語教科書『京話指南』(1888-89)に見える入声字の読音の特徴を指摘したい。第一に『指南』の北京語は他の資料と同様に中古音でいうところの通江宕梗曽の各摂において文白異読が見られるが、仔細にその内実を検討すれば文語音と白話音の分布が『語言自邇集』などとは異なっている。第二に、いくつかの韻においては主母音が『自邇集』や現代普通話の非円唇奥舌半狭母音[ɤ]ではなく円唇母音[o]または[ɔ]で記されている。このような特徴を持つ方言は管見の限り例がなく、現代音では江淮官話の一部が最も似たような状況を呈している。このことは発表者が過去に指摘した『指南』の性格と矛盾しない。最後に個別字の特徴的な読音を紹介したい。
・14:00−15:00
発表3 竹越孝(神戸市外国語大学)
「『一百条』系諸本対照の試み」
『一百条』系諸本とは,1750年頃の刊行とされる満洲語の会話書『一百条』と同じ内容を異なる言語や文字で記述した文献群を指し,満洲語-中国語対訳版,モンゴル語-中国語対訳版,満洲語-モンゴル語対訳版,満洲語-モンゴル語-中国語対訳版,モンゴル語オイラト文語版,中国語版,英語訳等が現存している。竹越とスチンバト(内蒙古大学)はこのたび,これら『一百条』系諸本における満洲語6種,モンゴル語4種,中国語8種,英語訳2種,計20種のテキストを一文ごとの対照の形で示した『「一百条」系諸本総合対照テキスト』(全4巻,好文出版,2020-2024年)を刊行した。この発表では,本書の基本構想と,この対照作業を通して見えてきたことについて述べたいと思う。
・15:00−15:15 休憩
・15:15〜16:15
発表4 落合守和(東京都立大学客員教授)
「宣統元年序『伊朔譯評』と光緒34年刊『小額』」
清末1900年代の2書,①上海刊イソップ寓話の漢訳1909『伊朔譯評』と②北京刊の社会小説1908『小額』とを採り上げ,その言語特徴を比較する。①②ともに新聞連載をもとにしたものと言われ,①の元となった新聞『通問報』『通問報附刊』は上海図書館蔵(未見),②の原掲載新聞『(北京)進化報』は所在報告がない。1890,1900,1910年代の「白話報刊」は,共通語(「官話」/「普通話」)の口語を文字に写しとめる萌芽期のありようを追跡する手がかりとなる。印刷形式から見ると,①は傍点(○)あり空格なし,②は傍点なし空格あり,であり大きく異なる。語法は,「1.名詞」から「10.助詞」に至る太田辰夫1958・1970/72の枠組みを用いる。使用テキスト:①内田慶市編著『漢訳イソップ集拾遺』2025年,大阪:遊文社,②太田辰夫・竹内誠共編『小額(社會小説)』1992年,東京:汲古書院。
・16:15〜16:45 総会
年会費納⼊のお願い
今年度(2024年度)会費(⼀般5,000円、院⽣・学部⽣3,000円)を、郵便振替または銀行振込にてお納めください。昨年度分までの未納のある⽅は、年度を明記のうえ、あわせてお納めください。
・郵便振替の場合
口座番号:00980–6–119965 口座名称:中国近世語学会
*振替払込書(青色)は郵便局に備え付けられているものを使用してください。
・ゆうちょ銀行にお振込の場合
099(ゼロキュウキュウ)支店
当座預金 0119965 チュウゴクキンセイゴガッカイ